先日、一度しかないシャッターチャンスを狙って撮ったことがあったのですが、
見事にフィルムの装填をミスしてしまっていて、1枚も写っていないことがありました。
現像できなかったから、そこに証拠が残っていないから。
自分の記憶の中でだけ美化されているのかもしれませんが、
あの1本には「いい景色」が何枚かはあったはず。
ファインダーごしに見た風景を今も明確に覚えています。
デジタルだったらありえなかったミス。
それでも大切な風景はフィルムで撮っておきたいと思うのはなぜだろうと考えました。
意外とその答えは簡単だった気がします。
難しいうんちく抜きにして、単純明快な理由。
写真に残すのは覚えていたいから。
覚えていたいことには、時間を感じたいからです。
僕は1972年生まれですが、社会に出るくらいまでデジタルカメラなんてなくて、
今見れる当時の写真は全てフィルムによるもの。
それらを見返したとき、とても懐かしく、暖かい気分になれるんです。
写真を眺めていると、当時の気持ちや記憶がフラッシュバックしてきます。
これは個人差があると思うのですが、僕の場合、
例えつい最近の写真であっても、フィルムで撮ったものには
まるで昔のことのような「懐かしさ」を感じる何かがあるんです。
写りの特色や、フィルムならではのノイズ、
現像を待っている間のドキドキ感や、撮った瞬間に確認のできないもどかしさ。
それらを通り過ぎて仕上がる「写真」はかけがえのないもの。
デジタルも使っていますし、否定してるわけではありません。
でも、ここ一発の写真はフィルムを使いたい。
フィルムカメラはお金がかかる。
だから勇気がないです。という意見をよく耳にします。
たしかにデジタルカメラは一度買ってしまえば、フィルム代も現像代もかからないから
コストパフォーマンスは高いと思います。
たしかにランニングコストはある程度必要かもしれません。
僕は月に4~5本程度のフィルムを使います。
フィルムはだいたい500円くらいのもの。
現像とCD-ROMに焼いてもらう形式で880円。
なので月に9,000円くらいは使っているかもしれません。
これを高いと感じるか、趣味のコストと思えるか。
本当に表現したいものならば、なんとかなるレベルの話かもしれません。
少なくとも僕はそう思っています。
あと、もうひとつ。
もしかしたら、フィルムはいつか絶滅するかもしれない。
そんなことがあっては嫌ですが、その可能性がないとは言い切れません。
時代は確実に流れていますから。
そう考えると、余計にフィルムで残しておきたくなるのです。
残すものに後悔をしたくないから。
最後に、コストがかかるゆえに、1回1回のシャッターが重たいのです。
真剣に考えてしまう。
だからこそ、撮った時のことをよーく覚えています。
これはデジタルを使っているときにはあまりない感覚(個人差はあります)。
興味のある方は、ぜひフィルムを一度体験されてみることをお薦めします。