一語一絵

星になったねこ

2014.08.14 木 15:49

20140814

Shellyは外で暮らす自由ネコの中でもとびきりの美人で、
まっしろで長い毛をいつもなびかせている。

ある青い屋根のお家の塀にのぼって、Shellyとひなたぼっこをすることが僕の日課だ。
 
その日は朝早くからとても澄み渡った空が広がっていた。
そしてさらに青い屋根のお家の軒に真っ白なタンポポの綿帽子を見つけて、
僕はいつもより早くShellyを迎えに行こうと思った。
 
Shellyは僕のアジトから数百メートル先の、大きな道路を渡った先の教会の裏にたいていいるから
ひなたぼっこの時間には、そこまで彼女を迎えに行くのだ。
 
まだ早い時間だから、いつもはビュンビュン走っている恐ろしい戦車(自動車というらしい)も少ないし、
僕はShellyの元へと、思い切り走りはじめた。
 
次の瞬間、僕には何が起こったのか分からなかった。
最後にぼんやり見えたのは、カーブの先に消えて行く赤い光だった。
 
それからどれだけ走ろうとしても、身体が言う事をきいてくれない。
Shellyにタンポポのことを伝えたいのに、一緒にひなたぼっこをしたいのに、迎えに行けない。
 
何がなんだか分からなくなっていると、透明のネコが空からやってきて、
「キミはもうお星さまになったんだから、ここにいちゃだめなんだよ」と言った。
 
「もうShellyとひなたぼっこもできないんだよ」とも。
 
僕は、とてもとても悲しくなって泣いたけれど、地面が僕の涙で濡れる事はなかった。
 
幸いだったことは、Shellyが僕の最後を見なかったことだ。
Shellyはその日別のルートから、例の青い屋根の家に辿り着いていたのだ。
 
少し時間が経って、僕の身体は誰かがビニール袋に詰めて持ち去ってしまった。
だから、最後にShellyにお別れをすることもできなかった。
 
Shellyは一人でひなたぼっこをしながら、綿帽子を見つけてそっと近付いてみた。
すると、綿帽子が彼女のまっしろな長い毛にくっついたんだ。
彼女はうれしそうに、ゆっくりと教会へと歩きはじめた。
 
やさしい風に彼女の毛はなびいて、すこしずつ綿を蒔いていった。
何事もなかったように僕が片付けられた、その場所にも。
 
やがてその場所に小さなタンポポが咲いた。
Shellyはときどき僕を思い出してくれているのかな。
 
星になった僕は、ずっとShellyを見守るつもりだ。



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